2017年8月5日土曜日

INTERVIEW / IGORRR



Igorrr

http://www.igorrr.com/

フランスの奇才作曲家/マルチプレイヤー「Gautier Serre」によるソロプロジェクト「Igorrr」。
ブレイクコア~デスメタル~バロッック~クラシック~トリップホップ~オペラをごった煮した奇っ怪で美しいプログレッシブな楽曲は、様々なジャンルのリスナーから支持され、USの大御所デスメタル・バンド「Morbid Angel」のリミックスを手掛ける他、NHKの番組にて紹介されるなど、その人気は国境やジャンルも越えて世界中に広がっている。

ブラックメタル・バンド「Mayhem」や「Gorgoroth」のギタリスト「Teloch」や、ダブステップ・アーティストの「Niveau Zero」などのアーティスト達がゲスト参加した3rdアルバム「Hallelujah」は各国の音楽レビューサイトや雑誌にて絶賛された。
また、エレクトロニックスとデスメタル/グラインドコアを融合させたバンド「WHOURKR」、Igorrrのアルバムにも参加しているシンガーの「Laure Le Prunenec」とのユニット「Corpo-Mente」としても活動し作品を発表している。



Q.
出身地と年齢を教えてください

ナイスな始まり方!インタビューなのに、警察の職質みたい(:
28歳、1984年生まれ、ブルターニュ地方のレンヌ出身。

Q.
貴方の音楽ルーツは?いつ頃から音楽制作をスタートさせましたか?

ルーツは主にメタル。特にデスメタルとブラックメタル。
でも同時進行で、極端なエレクトロニカや東欧の伝統音楽も聞いてた。
多分、自分はそもそも音楽に凄く興味があったんだと思う。物心ついた時点でもう、曲とかドラムパターンやメロディーを作ってたから。

まず、古いヤマハのシンセで作り始めて、その後はプレイステーションの”Music”っていうプログラムで作るようになって、更にその後は、テープレコーダーとかサンプラーみたいなのを見つけてはいろいろ使ってみるようになった。
1つのものからというよりは、むしろ複数のものから影響を受けてお手本にしてた。

僕はとにかく、色んな音楽が好きだから、その全ジャンルに同じ場所に同時発生して欲しいと思ってるんだよね。Cannibal CorpseとAphex TwinとDomenico Scarlattiが同時に出会うみたいなノリで。



Q.
ギターを演奏してどの位になりますか?影響を受けたギタリストは?IgorrrやWHOURKRではどんなギターを使用していますか?

ギターは随分長く弾いてる。ちなみに、年齢のせいとかじゃなくて、すごい若い時に始めたからだよ:)
Metallica、Messhugah、Nirvanaを聞きながら、自分でギターを勉強した。

IgorrrとWHOURKRで使用したギターは、友人のJohan Deschampsが作ってくれたもの。彼はファッションデザイナーなんだけど、ある日僕のためにこの素晴らしいギターをWild Custom Guitarsで作ってプレゼントしてくれた。



Q.
ギター以外に演奏出来る楽器はありますか?

幼少期にピアノを始めて、クラッシックやバロック音楽を習った。ドラムも叩ける。デスメタルのバンドを過去にいくつかやっててドラム担当だった。
自分の楽曲では、ベースやパーカッションも自分で演奏してる。良い音を突き詰めるために、何年も時間をかけた。

Q.
最初に音楽を作ったのはいつですか?Igorrr名義以前の活動は?
Igorrrの名前の由来を教えてください。

Igorrrの前は実験音楽をやってた。
周りの環境から受ける汚染やルールを、一切排除して、しかも、安易な制作手段にはしることなく自分のスタイルを見つけ出すって点で、あの時期が一番ハードだった。だから、Igorrr以前のアルバムは自分独自の音楽性を見つけるための模索と言える。
当時から既に、自分にはIgorrrらしさが出ていたけれど、あの頃はもっと粗野で不器用だった。自分が探し求めた領域に手が届いた時、Igorrr名義で楽曲制作をスタートした。僕の記憶が正しければ、2005年頃だと思う。

当時飼ってたIgorって名前のネズミが、ある日死んでしまって、悲しく悲しくて。だからIgorの名前を、どうにか存在させておきたかった。
ちなみに、Igorはネズミと言ってもスナネズミだよ。Igorに「r」を3つ連打して、ちょっと難しい発音にしてみた。



Q.
Igorrrの音楽はブレイクコアだと思いますか?貴方はブレイクコアに影響を受けていますか?

うん、ある意味ブレイクコアだね。僕の音楽は、いわば複数ジャンルの融合で、
(デスメタル+バロック音楽+ブレイクコア+トリップホップ+伝統音楽)
ブレイクコアを見つけたのは、最初の楽曲を作ったよりも随分後だった。

だから、自分が好きなジャンルを全部合わせた上で、ブレイクコアの要素をミックスの基盤に取り入れてるんだ。

Q.
楽曲制作のプロセスと使用している機材を教えてください。

楽曲制作には、かなりの時間をかけてる:
まず、楽曲のアイデアを得て、自分が表現したい感じを明確にしながら、その感じを頭に描き出来る限りそれを研磨し続ける。
その後ようやく、実際の楽曲制作を開始する。1、2週間かけてレコーディングとミックスを行う、取り憑かれたように、ひたすらそのことだけ考え続ける。

しばらく経つと、自分の頭の中でだけ何度も何度も鳴っていた音が、今や楽曲が僕の頭の代わりにそれを再生してるってことが、自分の中で解ってくる。そしたら後は、数ヶ月か数年かけて少しその楽曲を改善する。
まさに自分が思い描いた通りの音楽になってきたら、ものすごく注意深く聞いて、これ以上何も自分にとってショックじゃないし、驚きも無いってことを確認する。

あと、ソフトウェアは複数使ってるよ。大体Cubase。でもアコースティックなレコーディングでは主にProtools。スピーカーはAdam S3aとYamaha NS-10とFostex PM05の、この3組が気に入ってる。

Q.
Igorrrの音楽には多くの楽器があり、多くのプレイヤーが演奏で参加しています。貴方は作曲出来て演奏も出来るのに、何故サンプリングをするのでしょうか?

確かに僕はどっちもやる。
自分の演奏をレコーディングする制作手段も、サンプルを使っての制作手段もどっちも気に入ってる。
僕は、既に昔から世の中に存在してるものが好きだ、そしてそれに新しい生命や視点を与えることも。サンプルの方が優れてるって思ってるわけじゃないんだけど、

もっとこう、僕が融合させたいジャンルの中でリーダー的存在になるような楽曲を作りたくて。
例えば、D. Scarlattiは僕にとってバロック音楽の象徴的な作曲家なんだけど、彼のジャンルを凶暴なデスメタルと融合させるとか、ね。

つまり僕は、既に存在する何かに全く別な何か、それか、少なくともそれを作った人達が想像だにしなかった何かを融合させたいんだ。

Q.
新しいアルバム(Hallelujah)はどんな作品になっていますか?Mayhemのメンバーが参加しているのですか?

そう、Teloch、「Mayhem」のギタリストだ。"Absolute Psalm" と "Lullaby for a fat Jellyfish"の2曲に参加してる。

でも、"Hallelujah"には、もっとたくさんのミュージシャンが参加してる。
例えばAdam Stacey(John ZornやSecret Shief 3、Estradasphereなどと一緒にもやっていたアコーディオン奏者)とか、バロックやデスメタルのシンガーとか、素晴らしいバイオリン奏者でありながら他にも多くの楽曲でストリングス演奏もしてくれたBenjamin Violetとか、Niveau Zero、Öxxö Xööx、Pryapisme、Vladimir Bozarのメンバーとか、とにかく多数参加している。

僕が作った曲を演奏して貰うのに一番ふさわしいミュージシャンばかりを選りすぐって、このアルバムを制作した。彼らは、音楽的に全く別の世界から来ていて(デスメタル、バロック、伝統音楽など…)、全員ものすごく才能に溢れてるからね。
彼ら全員に一緒に演奏してもらって、本当に嬉しかった。

このアルバムによって、長年願ってたことが実現できた。
つまり自分が好きな全てのジャンルを一カ所に集めるということが。これをリリースするには、何年もかかった。そして、ずっと本気になって頭で描いてきた何かを達成できた。
多くの時間を費やして、僕の音楽というものに対する主観的な認識をとうとう表現して形にすることが出来た。



Q.
貴方の過去作品では日本の琴の音もサンプリングしていましたが、日本の音楽に興味はありますか?

うん、興味ある。特に琴に。
昔々、僕のファーストアルバムの"Poisson Soluble"よりももっと前に、チープなMIDI音源の中に琴の音を見つけて、かなり沢山の楽曲で使いまくったよ。

Q.
音楽を作っていない時は何に熱中していますか?貴方の趣味は?

僕は、常に楽曲制作してる。
自分のニワトリとまったりしてる時以外は、ずっと作曲して、アルバム制作して、レコーディング、ミックス、ツアーって感じ。
自分のアルバムの制作以外の時も、Improve Tone Studiosというスタジオでサウンドエンジニアとして働いてる。

音楽に疲れた時は、人工的な音から離れるために山で自然に浸る。ブレイクコアもバロックも何もない状態で過ごす。つまり、冥想だね。

Q.
現在のフランスの音楽シーンについてどう思いますか?貴方が最近気に入っているフランス人アーティストは誰ですか?

残念ながら現在のフランスの音楽シーンは、僕がやってることに理解が薄い。
前に比べれば、少しはマシになったとは思うけど、充分な人気が出るまでには、まだやる事がありそう。

僕が最近気に入ってるフランス人アーティストはPryapismeとVladimir Bozar 'n' ze Sheraf OrkestärとRuby my DearとÖxxö Xööx。皆、系統はバラバラだけど優れたミュージシャン達。

Q.
Igorrrの音楽のコンセプトを教えて下さい。Igorrrの音楽を言葉で表す時は、何と言って伝えますか?

自分の音楽を言葉で伝えるのは難しいよ!音楽って、それそのものが伝えるものだし。だから、あんまり、言葉を並べて説明するもんじゃないよ:)

でも、まぁ、敢えて言うと、Igorrrはとても主観的な視点から音楽を表現する。音楽は、自分にとって最もしっくりくるもので、尚且つ、音楽は『完璧』な音楽がどんな音をしてるのかを僕に示してくれるものだ。



Q.
今後の予定を教えてください。次回のリリースは?そして最後に、WHOURKRの新しいアルバムの予定を教えて下さい。

僕の最新アルバム"Hallelujah"が12月21日にリリースされる!!
その後は、しばらくはツアー。
そして2013年は、多分、僕の新しいデュオの「Corpo-Mente」のファーストアルバムを出すと思うんだ、多分ね。

WHOURKRのアルバムはまだ予定してない。
このプロジェクトはもう死んでる感じで、2009年にリリースした"Concrete"っていう僕らの作品を"Blood Music"が2013年3月にLPでリリースするのを待ってるんだけど。例えリリースされたとしても、昔の音源を再版するだけで、新しい楽曲もライブも無い。

あ、僕、このインタビューをWHOURKRが死んだって話で締めくくろうとしてるの?それは悲しいね。
でも、僕はとにかく”Hallelujah”のリリースが楽しみでしょうがないってことが言いたい!!!
どうもありがとう!来年日本で、良いライブがたくさん出来るのを楽しみにしてる!
翻訳:KYOKA
※このインタビューは2012年11月10日に行われた物になります※