2017年8月5日土曜日
INTERVIEW / SUBMERGED(Ohm Resistance)
Submerged
https://ohmresistance.bandcamp.com/
ドラムンベース、ダブステップからノイズ、デスメタル、テクノなど多種多様なジャンルの音楽をリリースしているUSのインディペンデント・レーベル、「Ohm Resistance」のオーナーであり、ビル・ラズウェルとのコラボレーションやMethod Of Defianceにも参加しているプロデユサー/ベーシスト「Submerged」へのインタビューを公開!
Submergedはドラムンベース・クリエイターとしても数多くのレコードを発表しており、世界中のアンダーグラウンドなドラムンベース・シーンから人気を集めています。
2010年にはBill Laswell、Justin K Broadric(Godflesh,Jeus)、Enduser、Dr Israelとのバンド「The Blood of Heroes」を結成。ダンスホール~ドラムンベース~民族音楽~メタル~シューゲーザーなどのジャンルを飲み込み新しいレベルのミクスチャーサウンドをシーンに叩きつけ話題を集めました。
Ohm Resistanceは90年代末からレーベル活動を始め、Submerged自身の作品やミックハリス(ex Napalm Death)による「SCORN」や「Quoit」名義での作品、Black Sun Empire、Imaginary Forces、Silent Killer、Enduser、Kikoといったダークでハードなドラムンベースをリリース。ダンスミュージック以外にもGator Bait Ten、Merzbow、KK Null & Balázs Pándiといったドゥームやノイズなどの作品も発表。ストイックでハードな作品のリリースで根強い人気を誇っています。
Q.
貴方のバックグラウンドについて教えてください。何歳から音楽を作り始めましたか?
7、8歳。当時、母が80年代のヤマハのキーボードを持ってたから、右手でメロディー、左手でリズムを弾いてた。学校のバンドで、クラリネット、サックス、ベースギターも習ってた。
Q.
どんな音楽に影響を受けましたか?日本の音楽なども聴いていましたか?
14歳の時にNapalm Deathを聴きはじめた。
ある日、友達がNapalm Deathのカセットを見つけてきたんだけど、曲が短くてすごくびっくりした記憶がある。
日本の音楽も聴いてたよ。18歳頃から、Merzbow、KKNull、Aube、MSBRとかのノイズ系サウンドデザインものを聞きまくったよ。今まで聴いた音楽と全然違ってて、音楽にルールは不要と思うようになった。
Q.
音楽以外ではどんな物に影響を受けましたか?
映画からはよくインスパイヤーされる。実際、ほぼ映画からサンプルしてるし。
映画から音をサンプルしたら、全然違う音に加工するんだけど、映画の雰囲気は結局残るんだ。
旅にも影響をうけてる。僕は色んな国を旅しながら、その土地の伝統的な音楽の形式やフォームからインスピレーションを受けている。
そして、「音楽づくりの土台=反権威主義なライフスタイル」ていう、僕なりの図式ができた。
政治もビジネスも宗教も、僕には関係ない。影響も受けない。
Q.
何処を拠点ににライブ/DJ活動をスタートさせましたか?
1994年にパンクバンドでライブを始めて1996年にノイズを作りはじめた。
その後、ドラムンベースに没頭して1999年にワシントンDCでOhm Resistanceをはじめて、2002年にニューヨークに移動。僕はニューヨーク生まれだから、ベストチャンスを求めるには二ューヨークがふさわしかった。
Q.
Ohm Resistanceをスタートさせたのはいつ頃ですか?
1999年に僕とMick Harrisでスプリット盤(Quoit vs. Submerged "Everything You Do is Wrong / Page Fault")をバーミンガムの彼のスタジオ「Black Box Studio」で作った。
Mick Harrisは最初に僕の音楽を聴いてくれたし、何でも助けてくれた。
Q.
Ohm Resistanceの名前の由来は?
僕は電子工学の学校に通ってたから、それに関連した名前にしたかった。
で、先にOhmってレーベルがあって、それとかぶらないようにもしたかった。
あとは、Underground ResistanceっていうDJ界ですごくリスペクトされてたテクノレーベルがあって、『彼らのDIY精神』と『僕らのDIY精神』が似ていると思ったからOhm Resistanceに決めたんだ。
Q.
何故レーベルを始めたのですか?
周りの連中みたく、安易に既存の音楽シーンにくっついて音楽するのが嫌だったから。自分独自の道を開拓したいんだ。
Mick Harrisと最初のレコードをつくった時、これはいいぞと感じた。だからそれを自分たちでリリースするのもあたり前のことだった。
最初の2年間、ビジネスや資金関連のことは、Mark (M. Gregor Filip)に手伝って貰った。うちのレーベルは、アーティストもスタッフなのが特徴なんだ。
Q.
"The Project_Pale"、"NECESSARY"、"SCORN"などのロック/ダブバンドから"Submerged","Silent Killer", "Enduser", "Technical Itch"などのドラムンベース・アーティストまでリリースしていますが、Ohm Resistanceのスローガンやコンセプトを教えてください。
スローガンの「"WE WILL BE YOU FOR THE REST OF YOUR LIFE"」は、とっても抽象的で倫理的。
何かを一回意識に入れると、隅だろうが真ん中だろうが、それは意識に残る。だから、僕らは一つのジャンルにこだわらず、意識にいろいろ入れていく。
レーベルも、1本の木が枝葉を伸ばすみたいに、いろんなアーティストを枝葉に取り入れたい。
人はいろいろな音楽を好きになっていいと思うんだ。1つのスタイルだけ好きっていうのは、人生が短すぎるよ。
Q.
Ohm Resistanceのリスナーはどんな人達だとおもいますか?Ohm Resistanceはダンスミュージックのレーベルだと思いますか?
Ohm Resistanceのリスナーは、柔軟な人だろうと思うんだ。
例えば、ドラムンベースをやる僕が好きなのに、MerzbowとかNapalm Death、Converge、Thomas Könerに関係したコンセプトも受け入れてる。別ジャンルからうけた影響もひっくるめて、みんなが認めてくれるのは、意味が深いことだと思う。
僕らはダンスミュージック・レーベルとも言えるけど、それだけじゃない。ドラムンベース~ダブステップ~テクノとか、いいビートだしもちろん楽しい。純粋にフロア向けのトラックとして大好きだ。
でも、僕らがやっているのは「ダンスフロア+面白いもの」とか「ダンスフロア+ダンスフロア以外のもの」っていう音楽なんだ。
Q.
The Blood of Heroesを結成したキッカケを教えてください。
The Blood of HeroesはMethod of Defiancekaから枝分かれして誕生した。僕はMethod of Defianceと少しだけプレイしたことがあって、最初2回のレコーディングに参加してた。その後、僕はJustin BroadrickとEnduserとDr. IsraelをMethod of Defianceの3枚目のレコーディングに誘った。
まず、ビートをJustinに渡して、そこにJustinがギターをのせて、という風に。けど、こうしてできた音は本来のMethod of Defianceとかけ離れすぎてたから、Bill Laswellの周りの人間はナーバスになった。でも、Bill自身は、純粋にいい音楽を作ろうとしてただけだから気にしていなかった。
だけどやっぱり、周りの人間はそのギターが好きじゃなくて、結局 Billは新しいバンドを作れば良いさと提案した。僕も最初このアイデアは嫌だったけど、今となっては正解だったと思う。
Q.
The Blood of Heroesのメンバーはどのようにして揃いましたか?このプロジェクトにリーダーは存在しますか?
僕は、親しい友人のEnduserに、一緒にビートを作るよう頼んだ。僕らは2人ともGodfleshの大ファンだから、僕はEnduserとJustinに一緒に仕事をさせたかった。
その後、彼はBalázs Pándiを紹介してくれたから、ドラムのレコーディングに参加してもらった。
Enduserと僕はKJ Sawkaと組んで、彼がPendulumに入る前に何度かトリオで演奏して、レコーディングにも参加するよう頼んだ。M. Gregor Filipとは古い友達で、彼もレーベル創始者の一人で、僕は彼に、録音の最後に電子音とギターを弾いてくれと頼んだ。
こんな風に、Blood of Heroesでは僕がいつも提案してるから、もしかしたら僕がリーダーと言えるかもしれない。でも実際は、お互いに関わり合ってるし、全員ちゃんとやってるよ。
Q.
どのようにしてアルバムのレコーディングは行われましたか?
いつもプロジェクトの締めくくりはBill Laswellだから、僕がまずスタジオでビートを作ってJustin Broadrickに送った。彼がギターを弾き、数トラックはドラマーに送り、数トラックはボーカルを入れるためにDr. Israelに送る。
そして最後がBill Laswell。僕らは彼のベースに満足しているんだけど、彼のセッションは密室で録っているから、ミックスするためにJoel Hamiltonと一緒にStudio Gに行く。Joel Hamiltonも今や Ohm Resistanceをかなり支えている人間だ。
Q.
The Blood of Heroesの音楽スタイルは?
オールスタイル。鉄則は「ビートミュージック+ ヘヴィーギター+スペースサウンド+ダンスホールボーカル=全部がヘヴィーなグルーヴを奏でる事」
Q.
Bill LaswellとMick HarrisはOhm Resistanceに深く関わっている様に見えますが、彼等はレーベルに所属しているのでしょうか?
ここ数年、Mickとは特に大きく歩んでいると思う。
ScornのライブドラマーにYan Treacyを起用したのは、彼の音楽の面白い分岐点だったと思う。今彼がやっているのは、とっても伝統的なダブステップのダブミックスなんだ。
MickはまさにOhm Resistanceの最初の12インチ時代から一緒だったし、レーベルとしてだけじゃなく、友達としても、彼の作品をリリースし続けられてる事を誇りに思う。
Billも何年間もOhm Resistanceの重要人物だった。けど、去年はあまり連絡をとる機会が無くなっていた。ただ、現在の僕らのクルーであるTed Parsonsのベースを弾きたいとBillが言っていたから、それが実現すればいいなと思ってる!
Q.
Bill Laswellとの出会いは?
2003年にRobert Soaresというディレクター(Lambadaを発掘した人物でもある)がOhm Resistanceのドラムンベース音源を聴いた時に、僕がニューヨークに引っ越したという噂を聞いたらしい。で、彼がBill Laswellにその話をして、Billは僕を家に呼んだ。
僕にとって、ブルックリンという生まれた場所に戻った事も、Billみたいなミュージシャンと仕事を始める事もどっちも素晴らしかった。そして2003年に "Brutal Calling"を一緒に作ってリリースした。
Q.
ドラムンベースとジャズを融合させたBill Laswellによるプロジェクト「Method Of Defiance」では貴方はどんな役割をしていましたか?
Method of Defianceは最初にレコーディングしたBrutal Callingが発端になった。その後、Sublight (RIP)が僕らの音源をレコーディングすることになって、それが最初のMethod of Defianceの正式なレコーディングで、「The Only Way to go is Down」を録った。この時、近藤等則とGuy Licataが参加した。Guyは僕がBillに紹介したんだけど、彼は今までに一緒にプレイしたドラマーの中で一番良いんだ。Method of Defiance vs. Painkillerっていう形で5、6回一緒にライブしたよ。
Q.
Ohm Resisntaceの運営を10年間続けてきて、思ったことは?
もっと多くの人が自分でビジネスをして行かなくちゃならないと思う。ミュージシャンもビジネスを学んでいくべきだよ。
アートで生きるためには、それをうまくやることもアートに含まれてる。アーティストとして人に利用されたくなかったら、自分で音楽のリリース方法や収益の上げ方を学べばいいんだよ。
10代の若者は、気軽に商業音楽を違法ダウンロードしてるけど、どうせ金持ちから盗んでいると思ってるから罪悪感なんか感じてない。
けど、本当にアートを作っている人間から盗むのはどう思う?きっと多くの人が納得できないよね。
だからこそ、僕らアーティストがビジネスサイドの顔も持つことが大事だと思うんだ。
Q.
Ohm Resistanceは数多くのCD/LPをリリースしてきました。デジタルリリースに関して、どう思いますか?今後もCD/LPは残ると思いますか?
デジタル配信はいいね、問題ない。ビジネスモデルの進化を感じる。できたての音楽を届けられるから、僕もデジタル商品を扱ってる。
当然なにかしらハードウェア的なものは必要だけど、CDとLPはどうなのかな?特別な音楽だったら、物として所有したいと思う。
商業音楽なら物なんかいらないな。だって彼らのビジネスモデルは、テレビを見てるだけで何でも鵜吞みにする猿みたいなファンで成り立ってる。本物のファンは要らないだろ。けど、自分が好きなアーティストを支えようとして、着信音を買うだけじゃない本物のファンは、何か手元に残る特別な物が必要だろう。
Q.
違法ダウンロードに対抗する手段は存在するとおもいますか?
違法ダウンロードは、社会の成長の途中で起きてる問題だと思ってる。例えば、人は家畜を盗み続けてるし、銀行強盗もよくある話。つまり「盗み」は、規格内の行動なんだ。
今現在、その規格内の「盗み」に音楽も入ってるんだ。とはいえ泥棒はいつまでもできるものじゃない。
たぶんある日、 Britney SpearsやKaty Perryみたいな退屈で薄情な音楽を盗んでも、自分に何も残らないことに気づくだろう。
Ohm Resistanceとか、WARP、NinjaTune、Ipecac、HydraHeadは、それとは逆の立場で残っていくだろう。ちなみに僕は、WARPやNinjaTune、Ipecac、HydraHeadのことをすごいと思ってる。クリエイティブの構築に貢献してるし、プロジェクトに参加してるアーティストも尊敬してる。
Q.
今後の音楽シーンについて、貴方の考えを教えてください。
僕らは自己表現のために音楽を作ってる。この自己表現と僕らのやりたいことが、みんなのそれとマッチすれば良いと思う。
音楽は僕らのアートだから、それを人と共有したいんだ。音楽はどんな民族にも共通した言語だから、自分は地球上に一人じゃないと思えるだろう。
ちなみにうちのHPもチェックしてみてほしい。Ohm Resistanceでフェイスブック、twitterもあるし、みんなとつながりたいし、気軽にコンタクトをとってくれたら嬉しいな。
Q.
日本のOhm Resistanceのファンにメッセージをください。
日本はとてもユニークな場所だと思う。言葉も食べ物も、ライフスタイルも、地球上で日本しかない。日本の人にも僕らの音楽を是非聴いてほしいし、近いうちに日本に行ってみんなに会って演奏したいし、日本文化からインスパイヤもされたい!
あと、桜庭和志の耳をちゃんと直してやってくれ。次から、試合で耳がとれないように。(:
翻訳:KYOKA
※このインタビューは2011年1月13日に行われた物になります※