2017年8月6日日曜日

INTERVIEW / Jamie Teasdale (Kuedo/Vex'd)



Jamie Teasdale (Kuedo/Vex'd)

http://kuedo.co.uk/

グライム/ダブステップ・シーン創成期から活動していたRoly Porterとの伝説的ユニット「Vex'd」や、ソロプロジェクト「Kuedo」でベースミュージックを中心に絶大な支持を受けているアーティスト「Jamie Teasdale」のインタビューを公開!

2004年にUKのSubtext(現在はVex'dの片割れであるRoly PorterやEmptyset、Paul Jebanasamなどのモダンクラシック~インダストリアルを中心にリリース)からVex'dのデビューシングル「Pop Pop / Canyon」を発表。当初はダークでハードなBreaks~UK Garageなステイルで話題を集めていましたが、05年にPlanet-muからリリースされたGrimeクラシックの「Gunman / Smart Bomb」でアンダーグラウンド・ベースミュージックシーンに衝撃を与えました。
05年にはVex'dのデビューアルバムにして00年代を代表する超名盤アルバム「Degenerate」をPlanet-muから発表。Pop Pop V.I.P.、Angels、 Corridor、Fire、Lion V.I.P.などなど、収録曲すべてが衝撃的な内容で、リリースから10年以上が立った今でもまったく色あせない最高のアルバムであり、様々なジャンルのリスナーに支持された結果、Grime/Dubstepというジャンルの知名度をいっきに世界に知らしめた歴史的名盤でもあります。

09年にJamie Teasdaleは初のソロ音源を「Jamie Vex'd」名義でPlanet-muから「In System Travel E.P.」をリリース。2010年にはコンピレーション的な内容となったVex'dの2ndアルバム「Cloud Seed」をリリース。Warrior QueenやAnnekaがボーカルで参加し、更に深みを増し、ドローンやノイズ、ブレイクコア的な過激なサウンドを多く取り入れた傑作アルバムになっています。
そして、2010年に「Kuedo」としての活動を始め、「Dream Sequence E.P.」をリリース。2011年にリリースされたKuedoのデビューアルバム「Severant」は大手メディアからレコードショップ、DJ、そして世界中の純粋な音楽好きに絶賛され、2011年を代表する名盤アルバムとなりました。



Q.
貴方のバックグラウンドを教えてください。楽曲製作を開始したのはいつからですか?

12歳頃、ダブルカセットレコーダーで人の曲を編集して遊んでた。数年後、amiga trackerで曲をつくりはじめた。16歳からDJを始めて曲作りはやめた。
20代前半から再び曲作りをスタート。これで、やっときちんと制作をスタートした気がする。

Q.
どんな音楽に影響を受けていますか?

人生で一番影響を受けたのはヒップホップ、UKレイブミュージック、エレクトロニック・シンセ。他にもいろいろ通ったけど、結局はこの3つ。

Q.
日本の音楽を聴いていましたか?

もちろん。日本は良い音楽が沢山あるから。
DJ Krush、DJ Bakuのヒップホップをかなり聴いた。竹村延和、Goth-Tradとかのエレクロニック系も聴いた。
あと、伝統音楽。琴や太鼓、歌舞伎も好きだよ。

Q.
音楽以外に影響を受けたものは何ですか?

Blade Runner!この映画を見てなかったら、今みたいな音楽を作ってない。
あと、SF映画やアニメも、想像を形にするために役立つ。
音楽とそれ用の絵のインスピレーションを得るのに、アートや写真に目を向けるようになったな。

Q.
最初にDubstep/Grimeを聴いたのはいつごろでしたか?

2002年くらいから、僕もRoly(Roly Porter)もダークでインスト気味なガレージを聴いてて、そこからいきなりGimeとDubstepに走ったんだ。

Q.
Vex'dをはじめたキッカケを教えてください。

2003年頃、Rolyと僕が一緒に住んでたのがきっかけ。
当時のレイブミュージックは、大人しくて味気なくて、相当つまらなかった。Vex'dでそういうのをひっくり返そうとした。何かやってやろうって燃えてた。

Q.
Vex'dは結成当時どんな音楽を作っていましたか?

最初の方はかなりダーク。最近のRedlightと少し似てるかも。
ノッティングヒルカーニバルのサウンドシステムで聴くようなタフなパーティを前提に、レイブミュージックを作った。

Q.
どんな工程で楽曲は作られていましたか?Rolyとの曲作りはデータのやり取りでしたか?それともスタジオで録音作業をおこなっていましたか?

一緒に全部作る曲もあれば、別々に作る曲もあるよ。最後のエンジニア的な作業は僕の役目だけど、別に必要ない時もある。例えばKilling Floorは、Rolyの作業で終わってる。

Q.
ファーストアルバム「Degenerate」が出来るまでの過程を教えてください。はじめからGrime/Dubstepのアルバムを作ろうと考えていましたか?

Vex'dの音楽をGrime/Dubstepにする予定はなかった。とにかくVex'dのアルバムを作ろうとした。
もちろんアルバムに反映されてないアイデアもたくさんあった。すごいダブとかヒップホップっぽいのとか、アンビエントっぽいアイデアもあって、ラッパーと一緒にやったりもした。

けど結局アルバム用に選んだ曲はポストガレージ系みたいな音で一緒に作ったやつだった。
で、最終的にはGrime/Dubstepなアルバムに仕上がって、まさに偶然、ぼくらはそのシーンの一部になってたんだ。

Q.
Degenerateは2000年代のUKミュージックのベストアルバムだと思います。この時期(2000年)にはGrime/DubstepのCDでのリリースは非常に少なかったです。(Grime/Dubstepの作品は殆どレコードでした)
このアルバムをキッカケにGrime/Dubstepを知った人も多いと思います。アルバムには多くのドローン~ノイズの要素が使われれていますが、貴方達はダンスミュージックとノイズミュージックを合体させようと計算していましたか?どんな音楽スタイルを目的としていましたか?

このアルバムは実験的な意図で作った。
リリースされてない初期のVex'dは、ノイズ要素は少なかった。でも、当時のロンドンのダンス系クラブがあまりにつまらなかったから、2004年頃はノイズ。
メタルバーやクラブに2人で通ってたから、メタルノイズの影響を受けたんだ。
その頃、Planet-Muと契約した。Planet-Muのことは知らなかったけど、僕らをクレイジーな世界に導いてくれた。以前は知らなかった、ノイジーエレクトリックミュージックとか、その面白さとか。

あと、Degenerateを作ってた当時、僕はちょうど短期間のサウンドデザイン学校を修了したばかりだったんだけど、学校の生徒からMerzbowとかのすごいノイズものも教えてもらった。
だから、ちょうどインスパイヤされたばかりのノイズ要素を取り入れて、純粋なUKレイブアルバムを作るのが面白いだろうってことになった。

みんなは僕らをゴスでノイズな連中だと思っているけど、実際は僕らはそういう音楽のことを全然知らなかったんだ。今思い出しても、面白いな…。だけど、今や、ゴスノイズが僕らの定義だもんね。



Q.
どういった経緯でPlanet-Muから作品をリリースする事になったのでしょうか?Mike Paradinasとは何処で出会ったのですか?

僕らの友達のRob (DJ Pinch)がPlanet-Muにトラックを送って、Planet-Muが僕らにアルバムを作らないかと言ってきた。
それから、Mikeに合った。南ロンドンに僕が借りてたスタジオに彼がやってきたんだ。僕はレーベルのことは何も知らなかったけど、Mikeはたくさん音楽を教えてくれて面白かったよ。

Q.
Vex'dはdubstepシーンを作った貴重なアーティストの一人です。2003~2004年ごろはどんなPartyに出演していましたか?その時にはdubstepのparty(シーン)はありましたか?

当時、シーンと言えばPlastic PeopleでオーガナイズされていたFORWARDだけだったよ。客が40人だけの日もあったけど、当時は世界唯一のdubstepパーティーだった。DMZがはじまるまで、ロンドンのdubstep系のイベントはどれも短命だった。

Q.
dubstepのアーティストでリスペクトしているのは誰ですか?

2004-2006年だと、Kode 9、本気でリスペクト。彼は本当にいろんな音楽に詳しい。彼はアバンギャルドも好きだったと思うけど、特に最新の海賊ラジオで流れるレイブミュージックを気に入ってた。あと、Wileyも明確なビジョンを持っててすごいと思った。
Loefahの作品はかなりショッキングで、彼本人と音楽の話をするのもかなり面白い。

Q.
貴方の考えるdubstep/grimeなどのベースミュージックの良さとは何ですか?

僕が思うに、Dubstep/Grimeなどのベースミュージックの良さは、ジャングルやアシッドハウス、新しいロンドンのハウス系音楽がすべてひとつの流れから発生していて、その全体像が好き。

Q.
現在のDubstep/Grimeなどのベースミュージックシーンをどう思いますか?

dubstepに関して、僕はもう別の世界にいる。もはや成長とともに離れた古い友人とか、元カノみたいな感じ。

だけど、raveは違う。
広い意味でベースミュージックを考えると、raveはいつもレベルが高くて新しい音楽を数多く生みだしてる。
Night Slugs、Hyperdub、Swamp 81は本当にハイレベルな新しい音楽を作ってると思う。

Q.
貴方のソロプロジェクト「Kuedo」はVex'dと違って非常にメロディアスです。「Kuedo」のテーマは何ですか?

KuedoとVex'dは、正反対。
Kuedoはメロディアスで、時々ロマンチック。Vex'dの音楽は慎重にプログラムされてるけど、Kuedoはもっと人間的な感情も入ってる。全体を通して自然に身体がうごくまま演奏して、レコーディングした。

Vex'dは2人の人間による共同プロジェクトだから、個人的意見よりもコンセプトを重視してることがKuedoと全然違う。たぶんVex'dの作業は、映画の台本づくりに似てると思う。KuedoもVex'dも、どっちも未来派主義なんだ。

Q.
Vex'dの新作と、Kuedoのアルバムのリリース予定はありますか?

Vex'dは未定。最近、僕らの音楽は別の方向性を目指してるんだ。いつかまた同じインスピレーションを持ったら、また新作を作るだろうね。だけど今は予定してない。そしてKuedoのアルバムを今つくってるんだ。

Q.
貴方が音楽制作で使っている機材を教えてください。どんなPCソフトを使っていますか?

毎年違うのを使ってるから、Ableton、Logic、tractor、MPCとか、今までいろいろ使ってきた。
僕は新しい技術を試したり、常に変化することが好きだんだ。だから、僕が今話してる事も、年末になれば変わってると思う。将来的にはもっと普遍的なものを見つけるかもしれないけどね。



Q.
貴方は今までに多くのCD、レコードをリリースしてきました。デジタルリリースをどう思いますか?これからもCD、LPなどの文化は残ると思いますか?

人間はいつでも、何かしら物的なつながりを必要としてる。けど、それはあくまで愛情やアイデンティティーに関わってくるような、本当に大切なものに対する欲求。
レコードやカセットテープがみんなに愛されてきたようなつながりはデジタルファイルにはないけど、デジタルリリースの方が便利だよね。けど、とても気に入ってるアルバムがあったらみんな物としてほしくなるはず。特にそのアートワークが美しければ美しい程、音楽もより鮮やかな存在になるし。

将来誰かがみんなを満足させるような新しい物体メディアを作ってくれたらいいな、と願ってる。けどそれまでは物がほしい人はレコードやCDなんかを買うだろう。
ちなみに、カセットテープも復活してきてるよね。かっこいいし、すごく良い傾向だよね。



Q.
貴方の思う理想の音楽シーンを教えてください。マーケット、リスナーにどんなことを求めますか?

僕は『良いものつくるぞ』とかいう健全な理由の下でアートや音楽をつくるのが好きなんだ。音楽が、別の興味を持つ人間のなかで人気になってきてるのは残念だと思ってる。hype machineは、何でもかんでも素晴らしいとか言って、本物を見つけるのを困難にしたと思う。

僕は、もう新しい音楽を信じなくなった人たちを知ってて、それはもったいなくて残念だと思ってる。音楽をつくってることのもう一つの素晴らしさは、自分以外に音楽をつくってる人に出会えることだと思う。それによって、本物のアーティストや、とにかくすごいアーティスト、あとは、意味のある音楽をつくれる人なんかに出会える。有名になるためじゃなくて、すばらしい作品をつくるためにやってる人たちさ。そういう人は信じちゃうよね。
そして結局大切なことは、そういうアーティストのレコードを買って支えること。大事だってわかるよね?

Q.
日本のリスナーにメッセージをください

今年、日本に行けたらいいな。みんなに会えますように!あと、僕の音楽を聴いてくれて本当にありがとう!

翻訳:KYOKA
※このインタビューは2011年1月18日におこなわれました※