1月8日に中野SF studio.にて開催したMurder Channel Talk Show Vol.2でおこなったカナダのブレイクコア・アーティスト「Hitori Tori」のワークショップ内でのインタビュー部分を公開!
当日はインタビューに加えてHitori Toriが楽曲製作やライブで使用しているDAWやOhm64を使ってのワークショップもおこなっていただきました。さらに、ワークショップ内では10分以内に1曲製作するというチャレンジ企画もおこない、当日来てくださったお客さんにBPMとコードを決めて貰ってHitori Toriが1曲作っていたのですが、決められた時間内でも流石のクオリティとセンスを感じさせる素晴らしい曲を作ってみせてくれました。
このインタビュー部分ではHitori Toriのルーツや楽曲製作に関して、カナダや世界のブレイクコア・シーンに関してなど貴重なお話をお聞きしております。
Hitori Tori
https://soundcloud.com/hitori-tori
Q.
軽く自己紹介をお願い出来ますか?
Hitori Tori(以降H).
こんばんわ。HITORI TORIです。Soundtrackerを使ってアシッドやブレイクコアを作っています。
日本語が喋れますけどちょっと変だからこれからは英語でね(笑)
Q.
音楽制作を始めたのはいつからですか?
H.
1997年にトラッカープログラムのPlayerProを使って音楽を作り始めました。
元々は4トラックのレコーダーを使ってノイズを作っていたんですが、ある時に風邪をひいて咳止めの薬を飲んでいた時に薬を機材に零して壊してしまって。丁度、その時に友達がFastTracker 2を使ってジャングルを作っていて、その友達にソフトを紹介して貰ってプロセスに興味を持ったのがキッカケとなりました。
Q.
その当時はどんなスタイルの楽曲を作られていたのでしょうか?
H.
ファストでノイジーなIDMやグリッチ。当時は速いテンポの曲を作る人がカナダにはあまり居なかったので速いIDMを作っていました。
Q.
その時はカナダにIDMのシーンはあったんですか?
H.
シーンとしてはそんなにありませんでしたね。IDM系のアーティストはトロントに数人居ましたがバンクーバーには居ませんでした。
Q.
IDM系で影響を受けたアーティストは?
H.
Aphex Twin、Boards of Canada、Squarepusher、Autechre、それからトロントにCellというアーティストが居たんですが彼に影響を受けました。ジャングルとノイズ・ミュージックにもとても影響を受けていて、ノイズミュージックではMerzbow、Boredomsや山塚アイのプロジェクト、ジャングルではMoving ShadowやMetalheadzなどのレーベルの作品が好きでした。昔一緒に住んでいた友達がジャングルのDJをしていたので彼のコレクションの影響がとても大きいです。
Q.
ノイズミュージックの影響はHITORI TORIの音楽に反映されていると思いますか?
H.
とても影響されていると思いますが自分の音楽はノイズミュージックからすると綺麗すぎるので(笑)。ですが、いつもリスクを負うようにしている点はノイズからの影響かもしれません。
Q.
リスクというのは?
H.
ノイズミュージックにはドローンであったりハーシュ・ノイズやアンビエント・ノイズなど様々なタイプがありますが、それらの音楽はメインストリームのカテゴリーから外れていてリスキーであると思います。自分の音楽も同じようにメインストリームから外れているのでリスクというのはそういう意味です。
Q.
HITORI TORIさんは過去に日本に住んでらしたんですよね?
H.
大阪に一年と埼玉に三年住んでいました。その時は英語の先生として子供達に英語を教えていました。日本の子供は面白いですね。ユーモアのセンスがいいです(笑)。
大阪に住んでた頃にレコードショップでアブストラクトで実験的なヒップホップやグリッチでオススメはありますか?と尋ねたら定員さんがTHA BLUE HERBを教えてくれてO.N.O.さんを知りました。O.N.O.さんの音楽はとても大好きです。それと、今はもう活動されていないみたいですがVibrant RecordingsやOrgaさんも好きでした。
Q.
「HITORI TORI」の名前の由来というのは?
H.
日本に住んでいた頃TVを見ていたら「ヒトリトリ」という言葉が聞こえて、それは「一人一人」の聞き間違いだったんですが、ヒトリトリという言葉がとても気に入りました。鳥が好きなので(笑)
Q.
ライブ活動を始められたのはいつ頃からですか?
H.
大阪に住んでいた時に見たShing02のライブでFADER BOARDが使われていて、僕もそれを使ってライブをしてみたかったんですが、その時には既にFADER BOARDは売り切れてしまっていました。その後、自分に合う機材をずっと探していて、やっとOhm64と出会ってこれならライブが出来ると思いました。Soundtrackerがとても好きなのでSoundtracker以外でライブをするのは考えられませんでしたが、それを可能に出来たのがOhm64でした。本格的にライブを始めたのは2010年からだったとおもいます。
Q.
Ohm64はどうやって見つけたんですか?
H.
グーグルで「ボタンが沢山あるMIDIコントローラー」と検索したら出てきました(笑)。
Q.
Ableton LiveやFL Studioなどは使われたことはありますか?
H.
Ableton Liveはバンドや他のアーティストとセッションする時に使う時はありますが製作には使っていません。FL Studioは使っていませんね。勿論、Ableton LiveもFL Studioも使っている人はリスペクトしています。僕は常にRenoiseとSoundtrackerです。ビジュアルがとても好きなんです。見ているだけで興奮させてくれます。
Q.
RenoiseはVenetian Snaresなどのブレイクコア系アーティストもよく使われていますよね?
H.
そうですね。ブレクビーツをチョップしたりするのが簡単なのでブレイクコアみたいなジャンルにはとても使いやすいと思います。
Q.
曲を作る時は最初に何から作られますか?曲が完成するまでに掛かる時間はどれ位でしょうか?HITORI TORIさんのビートは非常に複雑でプログレッシブですが、どうやってビートのアイディアは生まれているのですか?
H.
ビートから作り始めてその後にベースライン、メロディといった形で進めています。ビートに関しては忍耐力が無いのですぐ飽きてしまって変えてしまうのとジャングルを沢山聴いていたからですかね。1曲作るのに大体2日位です。
Q.
音楽を作る時に意識している事は?
H.
ゴールを一番目に持って二番目はとにかく楽しんで作る事です。皆さんも曲作りで退屈になった時や行き詰った時は外に出て散歩したり違う事をしたりすると良いですよ。
Q.
どういった経緯でブレイクコアというジャンルに出会ったのでしょうか?
H.
1997年にグーグルでブレイクコアを探したんですが見つけられませんでした。98年に探した時も見つけられなくて一旦諦めましたが、2001年にもう一度検索したら日本のOVE-NAXXさんのレーベル「accelmuzik」がヒットして遂にブレイクコアを見つけました。それからVenetian Snaresなどの代表的なブレイクコアのアーティストを聴き始めました。
Q.
検索して探していたということはブレイクコアという単語自体は知っていたのですか?
H.
自分で作ったとは思いませんがブレイクコアというジャンルは存在するはずだと思っていました。イメージとしてはパンクとジャングルのミックスやノイズとジャングルみたいな。そういったジャンルを探していました。
Q.
カナダのブレイクコア・シーンについて教えてください。
H.
カナダにブレイクコア・シーンは無いに等しいです。2004~07年の3年間だけ2~3組のグループがトロントで活動していてブレイクコア・シーンがありましたがバンクーバーにはありませんでした。今でもモントリオールやバンクーバーにはブレイクコアのアーティストが来る事は余り無くて年に1~2回ある程度です。そんなに活動的ではありませんね。
Q.
HITORI TORIさんは頻繁にヨーロッパでライブをされていますが、世界的に見てブレイクコアが一番盛り上がっている国は何処だと思いますか?
H.
ベルギーとUKのブリストルですね。ブリストルでは殆ど毎週ブレイクコアやジャングルのイベントがあります。とてもクレイジーな所です(笑)。ベルギーは国全体にブレイクコアが好きな人が多いです。2013年にベルギーのBreakcore Gives Me Woodでのライブはとても印象的で楽しかったです。
Q.
HITORI TORIさんは日本のブレイクコア・レーベルからのリリースやイベントにも出演されていますが、日本のブレイクコア・シーンをどう思いますか?
H.
日本のブレイクコア・シーンは最高です。一つのイベントでチップチューン、ノイズ、フットワーク、ポップやハードコアなど色々なジャンルが一晩で聴けるのが良いですね。そういったイベントが出来る日本はとても素晴らしいです。
Q.
今後の活動において目標とされている事はありますか?
H.
ノイズミュージックを作りたいです。フィードバックやディストーションをもっと使ったノイジーな音楽。今のHITORI TORIの音楽はとてもセーフですから。
Q.
HITORI TORIさんの作品は基本的にデジタルフォーマットが多いですがフィジカル・リリースをどう思われていますか?以前バイナルでリリースされた「Phoxii – La Comandante」にリミックスで参加されていましたがバイナルに興味はありますか?
H.
Phoxiiのリミックスは気に入っていますがレーベルがマスターするのを忘れちゃってボリュームが小さかったのが少し残念でした(笑)。あれが僕にとって最初のレコードでのリリースでした。バイナルは好きなので興味はありますが、僕の音楽はバイナルでは使い図らいのかもしれません。昔、Peace Offからレコードのリリースのオファーがあったんですが、とても緊張してしまって凄く時間が掛かってしまいました。レコードでのリリースでもあるので完璧にしたかったんです。それで曲が出来て連絡した頃にはタイミングが遅かったみたいです(笑)。
Q.
今後のリリース予定は?
H.
Occult Researchという素晴らしいIDMのレーベルからカセット・テープのリリースがあります。
Q.
それでは最後に何かメッセージがあればお願いします
H.
来てくれてありがとう!お疲れ様です!