2017年8月6日日曜日
GEODEZIKによる"MURDER CHANNEL MIX CD VOL.1"ライナーノーツ全文公開!
2012年8月にリリースしたMurder Channelの初MIX CD「DJ TECHNORCH & V.A / MURDER CHANNEL MIX CD Vol.1」の初回出荷版に封入されていたGEODEZIKさんによるライナーノーツを公開!
アレック・エンパイアが90年代初頭に主宰していた、とてもやかましく素敵なレーベル" DHR "にヤラれた少年が、日本でDHR以上に多様性を持ったレーベル
MURDER CHANNELを造り上げた。実に信じ難い話だが...。
主宰ウメは今でもハードコア・レジェンドの一人、ミック・ハリス(オリジナル・ナパームデスのドラマーであり、SCORN名義で実験的かつフロアライクなトラックを作り続けている。何故「オリジナル」なのか?ナパーム・デスはアルバム毎にメンバーチェンジを行い、今じゃ1st,2ndアルバム時にいたメンバーがゼロ!という困ったバンドなのでわざわざ「オリジナル」と書かせてもらった。当時ミックは世界最速のドラマーの称号を与えられていた。)に所属アーティストのリミックスを依頼、以降も個人的に連絡を続けている。
彼だけではなく、新旧ビッグネームに積極的にコンタクトし、カタログを増やし、また無名のアーティストの発掘も同時に行う。
これを一人でよくぞ...と。
一つの物事に没頭し、それが世間的に価値のある/ないに関わらず結果を残す事は後々ポジティブな貢献をするのではないか。
MURDER CHANNEL(以下MC)が発信するサウンドは所謂「ブレイクコア」。
現状ではほとんどの国内外のレーベルが、デジタル配信でのリリース。MCのあくまでもフィジカルを流通させたいという姿勢は、なかなかイイ。
今作は、意外にもMC初となるMIX CD。同人音楽〜ゲーム・ミュージック〜ニコ動〜ハードコア〜と様々な分野を自由自在にサーフィンする鬼才、DJ TECHNORCHが実にスリリングにミックスしている。
多少語弊があるがその質感はトランシー。全31曲(MCからのリリースのみ)というヴォリームを感じさせなく、あっという間にMCの魅力とハードコアの多様性と可能性を聴く者全てに感じさせてくれる。
MURDER CHANNELの集大成と同時に、「ハードコア」を総括する重要な一枚である。
MCは2004年に第一回目のイベントを行う。そこから熱に浮かされたように、東京を中心にイベントを開催。国内は当然として、十カ国以上の国からアーティストを招きツアーを行う。
恵比寿のMILKで割と定期的に行われていたイベントは上下階、激音を求めるヘッドバンカーでパンパンだった。(顔から流血したスキンヘッドの若者がヨロ〜っとした光景はおっかなかったな〜ぁぁぁ)意外なところでチップチューンの"Printed Circuit"も下のフロアでライブしていた。
吉祥寺スターパインズカフェの"DJ Donna Summer"のパフォーマンスはジャンル関係なく、「ちょっと音楽好き〜」くらいな人でも楽しめるホントーにカッコイイものであった!オーガナイザーの方々!大型フェスに早くこの人を呼んだ方がイイですよ!
一通り暴れ倒して、Murder Channelはレーベルとして活動を開始。
第一弾は今回のDJ MIXを担当した、" DJ TECHNORCH : Boss On Parade Remixes: DJ Technorch Meets XXX " 。2007年のハナシ。DJ TECHNORCHのレーベルである「999Recordings」とのコラボ。
リミキサーには海外からCardopusher、Luke's Anger、FFF、DJ Donna Summer、そしてRave Music/Happy HardcoreシーンにSesame's Treet、Piano Progressionというメガヒットを残したLUNA-Cが参加した異色のリミックスアルバムとなった。
2008年はカタログ第二弾、TR-8でウォブリーなベースを鳴らしているベネゼーラの"Cardopusher"のフルアルバム"UNITY MEANS POWER"。レゲエ~メタル~トランス~ヒップホップまでミックスしたサウンド。収録曲"Homeless(Quarta330 remix)"は2011〜12年にアルバムがリリース・ラッシュのKode9主催"Hyperdub"からライセンスリリース。MCはやる事が早いのと、先見の明があるのが特徴でもある。
続いてリリースされたのがジャパニーズ・ブレイクコアのパイオニアとも言える存在のアーティスト「UNURAMENURA」の過去作品をコンバイルしたアルバム
"UNDERGROUND WORKS 1999-2005"。Rephlexのイチバンいい時代を彷彿とさせるメロにバッキバキのアーメン刻みなので、見つけたら買いましょう。
2009年5月、レーベルコンピレーションCD「MURDER CHANNEL Compilation Vol.1」をリリース。イベントのレギュラーであった、Goth-Trad、Melt-Bananaから、DJ Scotch Egg、OVe-NaXx、DJ 100madoなどの国内アーティストやVenetian Snares、Broken Note、The VIP(Patric Catani)などの海外アーティスト達が参加。MHzのメチクロ氏による、とんでもねージャケもィヤバイのでこれも買いましょうか。
同年10月には本MixのTR−11で「ここまできたらカテゴライズ不可!」
なサウンドを響かせている、"DJ 100mado"とベネゼーラの"Pacheko"によるダブステップ・アーティスト2組によるスプリットアルバムを発表。
ちょっと待てよウメ、ハードコアはどこ行ったよ?という突っ込みは、冒頭でも触れたミック・ハリスがSCORN名義でリミックスを提供している事で打ち消される。このリミックスがド単調、激重!な一品なのでエクストリーム・ヘッドバンカーは全員聞いて頂きたい!
2010年はリリースも活発になり、まず、圧倒的なオリジナリティーで世界中のビートジャンキーをロックしているヒムロ・ヨシテルの Where does sound come from ? (アルバム)、
Def Jam所属ラッパー、Young Jeezyを迎えた " dDAMAGE : The Truth "(ミニアルバム)、
現在は " King Midas Sound "( Hyperdub ) のボーカルとしても活躍するKiki Hitomiと、英国の偏屈紳士二人組 " Cloaks " 主宰の " 3by3 " 所属、”Devilman”の”Gorgonne”による(ウメによると)「デス・ダブ ユニット」"Dokkebi Q"(これで「ドッケビ・キュー」と呼ぶらしい)のデビューアルバム" Hardcore Cherry Bon Bon "(なんとかぱみゅぱみゅに先駆けること2年!やはりMCはやる事が先駆的!)、
J-Coreやナードコア・シーンに多大な影響を与えた関西の重鎮アーティスト、ゴッドODのダブステップ/ブレイクステップ名義 " FREEZER : ST "(EP)を立て続けにリリース。この作品は某マガジン誌で高得点をマーク。というか未だに10段階でその音楽性を評価、ってオモシロイですよね〜某マガジン誌。
2011年には2度来日しているオランダのRaggacore/Jungleアーティスト" FFF : 20,000 hardcore members can't be wrong "(ジャケが最高に笑える何とも3AMエターナーな出来なのでチェック!アーリー・レイヴ讃歌です)ロシアの若きブレイクコア/チップブレイカーの " Totally Fuckedup " のデビューアルバム " Shit Info " (これが二周目で大傑作だと確信!最初聞いた印象は薄かったのですが...)を同時にリリース。後者のメロディーセンスはかなりのモノですよ!
そして8月にはレーベルコンピ第二弾 " MURDER CHANNEL Compilation Vol.2 " を限定777枚リリース。" Bjork : Biophilia " に参加したUKのダブステップ・デュオ " 16bit "(2012年現在解散状態)やラガジャングルシーンにて圧倒的な人気を誇るデトロイトの " Soundmurderer " など参加。
11月にはHondaladyのいっつも笑顔のDieちゃんによるソロユニット" DieTRAX "と " FFF " の2組によるブレイクビーツ愛が満載のスプリット"Hiroshima vs Rotterdam " これまた帯にまでこだわり抜いたDieちゃんのアートワークだけでも大爆笑なのでポチりますか。
2012年にはブレイクコア・シーン最後の大物アーティスト " Rotator "の日本限定アルバム" Rotator vs Mr KiLL / Disaster must Come " をMurder ChannelとPeace OffとのWネームにてリリース。
3月にはGHz Music StoreとのWネームにて全はぐれ者のココロの拠り所「インダストリアル」をテーマに、「お前等ライブ・アルバム、それももちろん一発撮りな?」というウメの指令のもと、 3by3の特攻隊長補佐" Dead Fader "と"FUTON DISCO+CARRE" の2(3)組が果敢にも取り組む。
前者の " Askanes "はパン・ソニック〜ラスターノートンといったちょいインテリ〜なレーベルのリスナーにもアピールするであろう、名盤。初期ワード・サウンドにも通じるローファイ感も実にナイス。ただ一つ難を言うならば、セパレートでないところか。そこがまた臨場感があってイイと言えばイイのだが...。(仕方が無いからDAWでチョン切りました)
ここまでマダチャンは美味しいブツをリリースしているにも関わらず、その旨味を知っているのは極少数。しかしそれは総帥ウメが意図して行っているのではないかと。つまり消費される事を恐れている、または避けている。
このミックスは様々な想いと矛盾を孕んだMCの「今まで」を更新し、更にサヴァイブが困難になって行くであろう「これから」を正面から笑顔で迎え撃つ最高にイカした取り扱い危険ブツだ。
とっとと聞きなさい。Why so serious ?
(TEXT by GEODEZIK)